最後のお願い

ここのところ、研究室にいると週に2人くらいの割合で「先生の授業を落として、単位が足りなくて留年しそうなんです」という学生が来る。そして今日も一人。進級判定の会議を明日に控えての来訪だから、遅いっちゃあ遅いんだよね。成績表を見せながら、「あなたはいかに授業に授業に出てなくて、テストの点が悪かったか」ということを説明する。それに対しても「いや、風邪ひいてたので」とか「結構頑張ったんですけど」とかの言い訳に加え、「何とか追加の課題で認めてもらえませんか」と理不尽なクレーマーさながらに必死ですがりついてくるので、一人来るとこちらもしばらくは気が滅入ってしまう。自分のメンタル面の弱さを再認識。

研究室に来られると、追い返すのも大変だ、という話を同期の物理の先生にすると、やはり同じような学生は来てるのだけれど「一応説明して、あとは話を切り上げてます」とのこと。大抵はそれで引き下がるけど「中には一時間くらい無言で研究室の中で立ち尽くしてた子もいましたよ。僕も無視して仕事してましたけど」だそうな。それで仕事できる胆力もすごいな、と見た目は華奢な彼を見直す。

気を取り直して「ブラック・アトランティック」を読み進める。音楽という形式のたえず転地と変容、変奏を繰り返す性質を、ディアスポラアイデンティティの「生きた遺産」として定義するあたりまで。展開されている議論は、すでに行き渡った感のある部分もあるけれど、論じ方の一つの「型」として教えられるところも多い。