学会へ

土曜日のみA文学会に参加。
「コモン・リーダー」と題されたシンポジウムを途中から拝聴。
ある講師の先生の発表では、ヴァージニア・ウルフの"The Common Reader"と題されたエッセイの

"The common reader ... differs from the critic and the scholar. He is worse educated, and nature has not gifted him so generously"

という引用から導入され、批評家や学者とは違って、自分の思うままに(よく言えば)自由で柔軟な読み方をするのがコモン・リーダー、という定義から始まる。このエッセイは「しかし自分にはそうしたアマチュア的な読み方はできず、どうしてもprofessionalな読みをしてしまう」というウルフ自身の立場も示されているわけだけれど。
そうした読みの専門家とアマチュアという、「読者」の枠組み内での区分けの検討に続いて、小説の始まりと言われるデフォーのテクストでの、すでに自らの読者層を想定して書かれている箇所を例に挙げて、書くことがすでに読まれることを内包しているという、読み手と書き手の骨がらみの関係に広げてゆく柔軟な論の展開を楽しく聞かせていただく。

ただ、その他の講師の先生方は「自由な読み手」としてのコモン・リーダーに力点を置いていて、あまり議論がかみ合っていなかったように見受けられたのが残念。

自分としては「どのように読んでゆくべきか」ということを考えるきっかけになったように思う。どんな理論を使ってというよりも、それ以前にある基本的なスタンスを考え直すという意味で。漠然としたメモだけれど。


その後はK先生とT先生と合流。いろいろあっても、研究に学務に基本は攻めモードのT先生の話を感心しながら聞き、子育てしながらも着実に研究業績を積み重ねているK先生の話を聞いて、自分も頑張ろうと気を引き締める。自分としてはちょっと愚痴が多かったので、今度は実のある話が提供できるようにしたいなと後で思った。

翌朝が早いので、名残惜しいながらも2次会で失礼する。
どうもありがとうございました。また会いましょう。

母校の地から離れているので、すっかりごぶさたしている先輩同輩後輩の消息もまとめて聞けたのもありがたかった。そうか、同級生の彼は結婚していたのか。帰って妻にも伝えたが、まったく関心を示さなかったのが印象的。