スキー研修での事件

まずは昨年11月頃のこと。

体育教室の中ボスクラスの准教授から「Mさん信州にいたのなら、スキーできるの?」と聞かれて「広島にいるときから始めたので、転びはしないけどヘタですよ」と答えると、「ああ、充分、充分」とのお返事。その時は何が「充分」なのかは分からなかったのだが、信じられないことに、それで2月に新潟で行われる二泊三日のスキー実習引率の手伝いが決定する。


それを聞いて、「子供が生まれてから数年はまともに行ってないですよ」という話を慌てて中ボスにすると、「じゃあ、こちらに行ってみるといいよ」と1月年始に長野の菅平で行われた体育教員向けの三泊四日のスキー研修に飛ばされる。費用は体育教室で持ってくれる(当たり前だ!)とのことだったのだが、体育教員向けの研修ということで、不安いっぱいで参加する。


 講習はレベル別で行われたので、自分は久しぶりということもあるし今までロクに教わったこともないので、初級者コースに入れてもらう。なかにはスキーは初めてという人もいて、ガンガン滑る体育会系合宿を想像していた自分としてはちょっと安心する(ちなみに、中ボスはスノボ班の“インストラクター”!)。
 しかし、「スキーは全く初めてなんですけど、体育教員ということで2月には引率して班を一つ持たなきゃいけないんで、不安ですよ」と最初は言ってた先生たちがみるみる上達してゆく身体能力の高さを目の当たりにして、やっぱり「職業」が違うとレベルアップのスピードがちがうなぁ、と感心する。あと、初心者とはいえ、さすが社会人、スキー板やブーツなど装備は良いものをそろえてらっしゃる。「てんくうの・・・」とまではいかないまでも、「ドラゴン・・・」クラスか?「かっこいいですね」と褒めると「指導員やってる知り合いからもらった物なので、よく分からないんですよ」という発言などは、「銅のつるぎ」レベルのレンタル品で固めた自分などから見ると、まさに“選ばれしもの”?。


基本的には板を「ハ」の字で滑る練習だったけれど、自分も重心の乗せ方やターンの時の重心の移動などいくつかコツを教わって、いくつか気付きを得て、とてもためになった。夜は宿屋のレストランでおいしいビール飲みながら、皆さんから大学で体育を教える意義や苦労話などを伺い、自分も「英語は英語で大変なんですよ」という話をする。


・・・などと、それなりに楽しいこともあったのだけれど、落とし穴は最終日に待っていた。初級グループとはいえ、さすが体育会系、4日目になると皆さんかなり滑れるようになっていて、自分などは完全にお荷物。けれど、インストラクターの先生も気分がよくなったのか、「最後にちょっと新雪が積もってるあたり挑戦してみましょうか」とさらにハードルを上げてくる。案の定フカフカの雪に板がもつれて、何度も派手に転倒。
それでも怪我もなく何とか降りてきて、無事にプログラム終了、と思いきや、自分のウェアのポケットが開いてて、入れてたはずの小銭入れがなくなっている!「中には何入れてたんですか?」と聞かれて、

「小銭と、免許証と、あと、結婚指輪

と正直にお答えすると、気の毒がられるよりも、「なんでそんなもの外して入れてたんですか!」と方々から突っ込まれる。いや、“貴重品”だったからなんですけど・・・。絶望的な思いで転んだあたりを捜索しながら2回ほど滑って降りる(仲良くなった中ボスのM先生も一緒に見てくれた)が、雪が降ってたこともあって、とても見つからず。


さらにツライのは、それを妻に言わなきゃいけないことで、電話して「ちょっと事件が・・・」と前置きして説明すると、「まぁ、しょうがないよね、怪我したとかじゃなくてよかった。結婚10年目に新しいの買ってね」と、大人の対応をしてくれたことが、逆に針のムシロ気分。これも年始から、業務の一環とはいえ家族を置いてスキーに来たバチが当たったのか?と自責の念。しばらくは大人しくしておこう。

「スキーけんしゅうをクリアした」
「スキーのレベルが1あがった」
「Mせんせいががなかまになった」
「けっこんゆびわをうしなった」


学生の引率についてはまた今度。